■資格を取得してキャリアアップしたい
■資格の取得方法とかかる時間を知りたい
介護業界でキャリアアップするには、介護福祉士を目指すことが一般的ですが、資格取得に動く前に「何から始めればいいのか」と迷ってしまう方もいるようです。
私の場合は、介護福祉士になるために実務者研修を取得しました。同業の方々に聞いても、ほとんどの方がこのルートを選択していました。介護福祉士を目指すにはお勧めの資格です。
この記事では、実務者研修の資格について、資格を取得するメリットや取得方法をご紹介します。
実務者研修ってどんな資格?
実務者研修は、介護職員初任者研修の上級資格として位置付けられている資格です。医療ケアの一部であるたん吸引や経管栄養の知識や技術を習得できるなど、現場で働く多くの介護職員のキャリア形成に役立っています。
実務者研修が生まれる前は、ホームヘルパー2級・1級や介護職員基礎研修など、複数の資格や研修が混在しており、複雑で分かりづらいものでした。しかし、実務者研修が生まれたことで介護福祉士などへのキャリアアップの道筋が明確になりました。
これは、介護職という仕事で生涯働くことができるという展望や魅力をもたらすものでもあると期待されています。
実務者研修を取得する4つのメリット
1|介護福祉士国家試験の受験資格を得られる
介護福祉士国家試験の受験資格を得るには、以下の3つのルートがあります。
① 養成施設ルート
② 福祉系高校ルート
③ 実務経験ルート
そして、介護福祉士国家試験受験者の約90%が③実務経験ルートを選んでいます。介護の現場で経験を積みながら受験資格を得られるので、このルートを選ぶ方が多いようです。
この③実務経験ルートから受験資格を得るには、実務経験3年以上に加えて、実務者研修の修了または介護職員基礎研修と喀痰吸引等研修の修了が必要です。
2|実務経験3年以上で介護福祉士国家試験で実技試験が免除
介護福祉士国家試験は筆記試験と実技試験で構成されています。筆記試験は全ての受験者が対象となりますが、実務経験3年以上かつ実務者研修修了者の場合は、実技試験は免除されます。
3|サービス提供責任者になれる
サービス提供責任者とは、訪問介護事業所で必ず設置しなければならない重要な人員で、訪問介護計画の作成や利用調整、訪問介護員への指導・助言などを行うリーダー的なポジションです。
そして、サービス提供責任者になるには実務者研修以上の資格が必要です。
実務者研修は、訪問介護事業所でキャリアアップしたいと考えている人にとって、まず目指すべき資格と言えます。
4|たん吸引と経管栄養の知識が身について重宝される
実務者研修を修了し認められると、たん吸引や経管栄養のケアの一部を介護職でも行うことができるようになります。これには、研修修了後にさらに実地研修に行って学び一定の条件を満たす必要がありますが、現場で働く介護職にとってはかなり有意義なものとなっています。
たんの吸引や経管栄養に関する処置は、医療行為です。自宅で生活をしている要介護者には家族等がこれらの処置をすることが認められていますが、施設で生活する利用者に対して無資格の介護職員が行うことは認められていません。
しかし、実際はこうした処置を必要とする要介護者は多数いらっしゃいます。看護師が少ない介護施設や、夜間などの看護師が不在の時間帯においては、たんの吸引や経管栄養のケアができる存在は重宝されています。
実務者研修の受講科目は保持資格に応じて一部が免除
保持資格によって受講時間が短縮
実務者研修は450時間のカリキュラムで構成されています。ただし、保有資格によっては受講科目の一部が免除され、受講時間を大幅に短縮することができます。保有資格ごとの免除については以下の通りです。
保有資格 | 短縮される時間 | 短縮後の受講時間 |
介護職員 初任者研修 | 130時間 | 320時間 |
ホームヘルパー 3級 | 30時間 | 420時間 |
ホームヘルパー 2級 | 130時間 | 320時間 |
ホームヘルパー 1級 | 355時間 | 95時間 |
介護職員 基礎研修 | 400時間 | 50時間 |
受講時間はあくまでも目安なので、詳細はスクールへの問い合わせが必要ですが、保有資格によっては大幅に受講時間を短縮することが可能です。
受講科目と一緒に受講料も免除
保有資格によって受講科目の一部が免除される場合、それに応じて受講料が安くなるのが一般的です。
無資格の場合の実務者研修受講料の相場は10万円~15万円程度。養成期間によっては20万円近くかかるところもあります。
しかし、介護職員初任者研修修了者やホームヘルパー2級所持者の場合は受講科目が免除されることにより、受講料が2万円ほど安くなる場合があります。最も多くの受講科目が免除される基礎研修修了者であれば、10万円ほども安くなります。
※受講料は各スクールによって異なるため、正確な料金は個別でスクールにお問い合わせください。
実務者研修の受講資格
年齢制限はなし
実務者研修の受講資格に年齢制限はありません。幅広い世代の方が受講しており、スクールによっては16歳以上を対象とするところも多数あります。60代、70代の受講も決して珍しくありません。
学歴は不問
受講に際して学歴を問われることもありません。これまでに、福祉や介護、医療に関する学校を卒業していなくても、問題なく受講できます。全く別の分野から介護職への転職を希望する方にも通いやすくなっています。
また、多くの介護施設や事業所は、最終学歴や卒業した学校よりも、人柄や熱意、保有資格を優先して検討する傾向にあります。
「実務者研修を取得したとしても、最終学歴によって就職できなかったらどうしよう」と不安に思っている方もいるかもしれませんが、その心配はしなくて良い場合がほとんどです。
受講に必要な資格はなし
実務者研修は全くの未経験者であっても受講が可能です。そのため、既に介護業界で働いている人だけでなく、これから介護職へ就きたいと考えている人や、介護職としては働かずに自分の身の回りの人の介護に役立てようと考えている人など、さまざまな人が受講しています。
ただし、実務者研修は介護職員初任者研修に比べると、より専門的な内容となります。全く介護現場を知らない人にとっては難易度の高いものになるでしょう。
じっくりと予習復習をする時間の余裕や熱意のある人は問題ないかもしれませんが、効率を考えると介護職員初任者研修を受講した後に挑戦した方が無難です。
介護職員初任者研修を受講した後であれば、受講の一部を免除されるため、重複して学ぶ必要もありません。
実務者研修の資格取得方法
450時間のカリキュラム修了が必須
実務者研修のカリキュラムは、厚生労働省によって定められたものです。全国どこのスクールで受講しても、その内容が変わることはありません。しかし、開講日や開講スケジュールはスクールによって異なるため、そのスピードは多少違ってくることもあります。
通常、無資格の人が受講する場合は、450時間のカリキュラムを6ヶ月かけて履修していくことになります。
保有資格によって受講科目の一部が免除されると、この期間が大幅に短くなり、2ヶ月程度で修了する場合もあります。
短期集中で履修していくのか、それとも比較的ゆるやかなペースで履修していくのかはそれぞれの状況に応じて検討し、通いやすいスクールを選びましょう。
スクールによって修了試験が行われる場合があります
実務者研修の修了試験は、初任者研修のように義務化されていないため、スクールによって実施されるかどうかは違ってきます。(私はありませんでした。)
仮に試験があった場合でも、義務化されていない修了試験に落ちて資格がもらえなかった…、というケースはかなり珍しいと言えます。
スクールは資格を取得させることが目的なので試験の難易度はさほど高く設定されておらず、合格点に達しなかった場合でも追試で合格できるようです。
スクールに通ったにも関わらず、取得できなかった人の状況として考えられるのは、修了試験の結果よりも受講途中のリタイア、課題の未提出、カリキュラムの未受講などが影響しているかもしれません。
無資格の人にとっては割と長期間の受講となるため、途中でやめてしまった、というケースも少なくないのではないでしょうか。
介護福祉士実務者研修はキャリアアップにおける重要な資格
無資格の人にとって、介護福祉士実務者研修はキャリアアップを進めていく上で重要な資格と言えるでしょう。
実務者研修を修了し、実地研修をすればたん吸引や経管栄養の処置の一部に携わることも可能となります。これは、多くの介護現場においていずれ必要となるスキルです。
これから介護業界への就職を目指したい方は、ぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。